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与太公「一体全体、近頃の世界経済はまったくなっとらん。
    富とはいったい何だ。人は万物の長などと言いながら、
    その長の長たる責任と義務は、
    まったく行われていない様に見えるではないか?
    低所得層の人間をさんざん低賃金労働でこき使った挙句、
    無抵抗で柔和な人々が続々と解雇され職を失って行く。
    それをただ高見から見下ろしているだけの富裕者層というものは、
    果たして人の情けというものを失ってしまったのか?」

 突然口火を切ったのは夜の「のんべえモール」のベンチに腰を降ろした与太公だ。
その身なりから見ると、一見浮浪者風だが、時折見せる眼光の鋭さから察するに、
熱血溢れる青年時代には何か志を持って大きな力と闘っていたような
名残りを漂わせている。年の頃なら五十台半ばといったところか。

胤 公「ほうほう、また始まったな。与太公様の大噴火だ。
    そろそろ酒の量が足らなくなって来たと見える。
    近くのコンビニで追加でも買って来てやろうかい?」

 与太公の突然の怒号に突っ込みを入れて来たこの男は胤公である。
時々木枯らしが吹きぬける如月の夜の「のんべえモール」では、
与太公同様名物になっている同じく浮浪者風の男だが、年格好は六十前後。
既に年金生活でもして暮らしているのだろうか。
酒の追加を自ら言い出すところをみると、
左程には生活に困っているわけでも無さそうである。

与太公 「そりゃそうだ。
     こんな身も心も冷え込む夜にはどんどんと酒のガソリンを給油して、
     中から熱くなるに限る。
     しかし今俺は、そんな酒の力に頼らなくても、
     中から熱くなる公憤の炎に炊き連れられ、
     身も心もかっかと燃え上がっているのだ。」
 
胤 公 「なんだい?そりゃお生憎だな?せっかく酒のガソリンを追加して、
     朝まで存分に叫ばしてやろうと思ってたのに。
     それならしばらくノンガスで話の続きでも聞いてやろうかい。」

与太公 「おっとっと…、遠慮にゃあ及ばねえよ。
     出した盃を引っ込める様な真似は御免こうむりますぜ。
     どうぞ余計な気は遣わずに、
     コンビニ特急で酒のガソリンを仕込んで来てくれい。」

胤 公 「なんだい、言うとやるとは大違いだな。
     それじゃあ渋々渋滞のコンビニ特急を発車させるか。」

…と、そこへ、街燈を七本ほど離れたモールの奥から、夜の闇をついて、
エレキ・ギターの音に合わせて、大声で歌う男の声が聞こえて来た。

    「朝日は照るとも曇るとも~ 月は~満つともかくるとも~」

胤 公 「ほお、また例のヤッコサンかい。
     これからコンビニ特急で酒のガソリンでもと思ってたら、
     アサヒのビールを奢れとか、
     次はミットにかけるぞ、なんぞとぬかしやがって、
     野球の優勝祝いでもあるまいに、
     この寒いのにビールかけでもやろうとでもぬかすのか?」

与太公 「よう、そりゃまた、
     このくさくさした気分には、いい憂さ晴らしになりそうだ。
     ひとつそのビールでも買って来て、
     変な歌うたいやがるやっこさんに、
     たっぷりお見舞いしてやろうかい。」

 二人がコンビニまで缶ビールを買い込みに行っている間も、
夜の「のんべえモール」には先程の男の声がエレキ・ギターの伴奏に合わせて
鳴り響いている。

   【http://www.youtube.com/v/bFGpb7VOYhE&hl=ja&fs=1】(参照)



     朝日は照るとも曇るとも
     月は盈(み)つとも虧(か)くるとも
     たとへ大地(たいち)は沈むとも
     曲津(まがつ)の神は荒(すさ)ぶとも
     誠の力は世を救ふ

     三千世界の梅の花
     一度に開く神の教(のり)
     開いて散りて実(み)を結ぶ
     月日(つきひ)と地(つち)の恩を知れ
     この世を救ふ生神(いきがみ)は
     高天原(たかあまはら)に神集(かむつど)ふ

     神が表に現はれて
     善と悪とを立別ける
     この世を造りし神直日(かむなほひ)
     心も広き大直日(おほなほひ)
     ただ何事も人の世は
     直日(なほひ)に見直(みなほ)せ聞直(ききなほ)せ
     身の過(あやまち)は宣(の)り直(なほ)せ

     ああ カムナガラ カムナガラ
     みたまさきはへましませよ
     かむすさのをのおほみかみ
     みたまのさちをたまひませ
     ああ カムナガラ カムナガラ
     みたまさきはへましませよ
     ああ カムナガラ カムナガラ
     みたまはきはへましませよ

 レジ袋一杯に缶ビールを買い込んで来た与太公と胤公だったが、
いざ大声で唄っている男の前まで来てみると、
何やら近寄り難い気迫に押されて、
男の前を右へ左へとウロチョロとするばかりで、
声一つかけるのにも気合負けしている。

 この男は、ここのところ毎日の様に夜中になると
「のんべえモール」にやって来て、夜が明ける頃まで歌っているので、
いつの間にやら夜の「のんべえモール」の遊び人の間では、
案山子彦(かかしひこ)という呼び名がつけられていた。

まんじりともせずに唄い続ける案山子彦の気迫に押されながらも、
若干腰を引き気味に缶ビールを片手に近寄って、
足もとにそれを置いてまた三メートルほど離れて、
与太公と胤公は案山子彦の前に立ちはだかった。

胤 公 「お、おい、あんた最近ここでよくみかけるが、なかなかいい声だな。
     しかし缶の酒を大飲みしたいとかなんとか唄っていたが、
     この寒いのによく頑張る奴だ。
     まあ、たまにはのんびりと缶ビールの一本でも飲んだらどうだい?」

与太公 「この不景気にたくさんの弱者が職を失って苦しんでいるという時に、
     この寒い中、そんな格好で唄い続けるというのも、なんだな…
     考えようによっちゃしあわせなもんだな。やりたいことが出来て…」

 そう言われて案山子彦はようやく息を休め、指を休めて、
差し出された缶ビールを手に持ち、
一度天に掲げてから「どうもありがとう」と言葉少なに礼を言うと、
栓を開けてグビグビと泡が吹き出すより早く缶ビールを一口飲み込んだ。

与太公 「おお、なかなかにいい飲みっぷりだ。気に入ったぞ。
     しかしなんだ、あんたの歌もなかなかのものだが、
     こんなことばかりしていて生活は成り立つのか。
     何処かの事務所に入るなり、
     何か仕事でも見つけて働くなりした方がよくはないのか。」

 案山子彦は何を言われても、ただニコニコとしているだけで、
あまり多くを語ろうとはしない。
唄っていた時の気迫はまるで何処かへ消えてしまったかの様に、
穏やかな微笑を浮かべたまま、与太公、胤公の話に耳を傾けていた。

胤 公 「この場所も、ほんの五年前まではデビューした奴等がいたおかげで、
     たくさんの歌い手さん達が集まって来たもんだが、
     今じゃすっかり廃れちまって、ここにあったデパートも倒産して、
     テナントの中には自殺者まで出るほどの騒ぎになったってえのに、
     なんだってあんたは、今でもこんな所で歌ってるんだい?」

 胤公にこう尋ねられて、先ほどまでただ微笑むだけで
特に語ろうとしなかった案山子彦がようやく口を切った。

案山子彦「この日の出島の浦島港も開国の折には世界の玄関として
     おおいに賑わったものだが、常世の国の前の大棟梁が交替する頃になって、
     世界は途端に金融危機に襲われて、百年以上もの歴史を持つこの百貨店も、
     遂に閉店に追いやられるという事態になった。
     この街も、世界の玄関などとは言われつつも、要するに元々は、
     常世の国の鉄舟の寄留地として栄えたのに過ぎぬ。
     その因縁のあるこの町の老舗百貨店が閉店するということは、
     いよいよ世界に覇を効かせて来た常世の国も
     断末魔の叫びをあげる時が近づいた様なものだ。
     その常世の国の恩恵で栄えて来たこの街が、ここまで淋しくなって来たのも、
     何もこの日の出島にとって絶望的な話だけではないのだ。
     この浦島港は、アケハルの代が始まって以来、
     何事も日の出島初の文明開化を行って来たのである。
     その浦島港で開化以来の老舗が倒産したということは、
     いよいよ常世の国の力も弱まって、
     日の出島本来のやり方を発動する曙光を照らし始めた様なものである。」

 寡黙な男だと思っていた案山子彦が、一端口火を切ると、
いつ止むとも知れぬふるなの弁舌を回転させ始めたので、
元来熱い血潮を秘め隠していた与太公も、負けじとばかりに口を切った。

与太公 「ほう、これはこれは…、
     男の癖に軟弱にも歌なんぞ唄いやがってとバカにしていたが、
     嫁はもらってみろ、馬には乗ってみろだ、貴様もなかなかの男だなぁ…
     この寒い中、そんな熱い話を聞かされちまっちゃあ、
     この与太公様も黙っちゃいられねえ。
     大体、この日の出島は、世界の親とも云われた神州(かみしま)である。
     それが先の大戦でピカドンの一撃をくらって
     アケカズ一大白王陛下(ひとひろはくわうへいか)の御英断により、
     日の出島人民の種を後の世に残す為に、堪え難きを堪え、
     忍び難きを忍んで無条件降伏なされたのだ。
     あのピカドンさえ無けりゃ、例え国民総玉砕しようとも、
     あんな常世の赤鬼や野天狗共には、
     この日の出島の底力をとことん示してみせて、
     アケカズ一大白王(ひとひろはくわう)様の御威光を、
     世界中に有難くも畏くも照り輝かせるのは時間の問題だったのだ。
     それをピカドンのおかげで盤古やオロチヤにまで侮られることになって、
     悔し残念を堪え忍んで来たのだ。
     それを思えば、例えここで不景気台風に襲われて、いくらかの犠牲を被ろうとも、
     肉を切らせて骨を断つ。
     九分九厘でグレンという大逆転的クロスカウンターをお見舞いするはいざこの時。
     そうとわかればこの与太公も、
     この老骨に鞭打って男の死花を咲かせることになっても悔いはない。
     積年の恨みに対して一矢報いむ喜びで、地に足がつかぬ思いだワイ。」

やや老いて、くたびれ果てた肉体の中に湧きあがった勇猛心が
与太公の瞳を少年の様に熱く輝かせている。
しかしその様子に共感しながらも、
落ち着き払った冷静な顔で案山子彦が後に続けて語り出す。

案山子彦「いや待て待て、
     時節の力で常世の国が断末魔の叫びを上げる時は近づいているとはいえ、
     軍備においてはまだまだ世界一の実力を失ったわけではない。
     更に我が愛する日の出島の情勢も、大自在天神と盤古大神の毒気にやられて、
     日の出島の民としての本来の力を奪われているのが実情だ。
     勢い余って常世の国を相手に戦を挑んだところで、
     忽ちのうちに捩じ伏せられてしまうのは考えるまでもないことである。
     そんなことになっては、
     せっかくのアケカズ一大白王(ひとひろはくわう)様の命懸けの計画も、
     全て水の泡になってしまう。
     勇みたいのは私も同じことだが、時節の力にはかなうものではない。
     だがしかし、それはひとりわが日の出島だけがそうなのではない。
     世界の大国常世の国だって事情はまったく同じなのだ。
    
       啼かぬなら 啼くまで待とう 時鳥

     ここは荒魂の勇を発揮して、何処までも忍耐して、天下の態勢我関せず式に、
     こうやって無為的に飲んで歌って騒いでいる方が、
     結局は天地の御心に適うのである。」

胤 公 「なるほど…、リストラされたのも、派遣切りが起きたのも天の恵み、
     要するにお天道様免許のストライキの発動ってわけだな。
     日の出島の人民は、元来が勤勉で実直で黙々と働く天国の民だから、
     天下泰平でありあさえすれば、上が大自在天だろうと盤古だろうと、
     オロチヤだろうと乾(いぬい)の金神(こんじん)だろうと、
     ヤンキー・モンキー言わずにおとなしくしていられる品のいい国民性だが、
     天地の神様からすれば、
     日の出島の一大白王(ひとひろはくわう)様がその御威光を奪われ、
     世界の艮(うしとら)に閉じ込められておる様なことでは情けない。
     世界の中心として崇め奉られる様にしなければ勘弁ならぬ、というわけで、
     戦わずして勝つ式に、徳の足らぬつよいものがちのやり方で、
     とことんまでやらして、
     遂に自らの策に落ちて足元をすくわれて自ら瓦解するに任せようという魂胆だな。
     お前さんがさっき唄ってたのは、
     あの口喧しい三五教(あななひきょう)の宣伝歌かと思って、
     なんだか耳が痛くなる様な心持だったが、
     闇の後には月が出る式の考え方も残ってるなら、
     わしらにも何となくわかるってものだ。」

そういって、手に持った缶ビールをまたグビグビと煽り出す。

案山子彦「飲んだくれて闇の後の月を待つだけでは駄目だよ。
     酒は飲んでも飲まれるな。
     どんな酒でもいちいち天に捧げて御神気さえ入れて頂けば、
     結構な御神酒(おみき)になるものだ。
     こうして月見の御神酒で活力を頂いて、月の後の朝日を待ちつつ陽気に唄い、
     共に語り合うことを過ぎ越し祭りといって、
     天地の神様のお叱りから見逃して頂くための、
     モーゼの頃から西アジアでも真似される様になった結構なならわしだ。」

胤 公 「なんだい、ただ酒を飲むんじゃなくて、
     これも神行だといわんばかりの高貴な野郎だ。」

与太公 「いや、しかし、こいつの言うことはなかなか愉快だ。
     おい、お前はまた明日もここに来るのか?」

案山子彦「何処へ行くといって、この御時世だ。
     他に満足の行く仕事が転がっているわけでもなし。
     男が一旦やると決めたからには命懸けだよ。
     こうやって毎夜、月夜で御神酒を頂きつつ、
     歌い語り合いながら天国を味わいつつ御昇天出来るのならば、
     これもまた一興だ。
     偉そうなことをいっても俺達みたいな町の履きだめ人足の世迷言。
     余程に酔狂な人士でなければ、そうそう耳を傾けられることもあるまいが、
     わが日の出島は言霊の天照(あまて)る国、言霊の幸倍(さちは)ふ国だ。
     我々の小さなこの声が、
     やがて世界中に轟くことにならぬとも限らないではないか。
     それでこそ天下のメッセンジャーの命懸けの本懐というやつだ。」

与太公 「おう、益々気に入った。この世知辛い世の中だ。
     まあ、今夜ぐらいはじゃんじゃん飲め。」

胤 公 「おいこら、与太公、出資元はこの胤公様だぜ。
     貴様が飲めというのは筋違いだ、有難く頂けと宣り直さぬかい?」

案山子彦「なるほど、言い得て妙だな?やはり腐っても鯛、
     老いても老兵には日の出魂が息づいてるというわけか?
     今夜はこの案山子彦もよい勉強になりました。
     では、せっかくですので、もう一本、有難く御相伴に預かり頂戴いたしまする。」

と言って、案山子彦はまた左手に持った缶ビールを天の月に向かって掲げると、
「頂きます」といって威勢よく栓を開けてグビグビ一口頂いて唄い始めた。

     人様は 誰も神の子 神の宮
     世は不景気におののきつ
     布団かじって寝涙の
     悔し残念噛みしめる
     今その時も天地(あめつち)の
     御祖(みおや)の神の奥心
     探りて過ごせば再生の
     力を得るは目の当たり
     我等は神の子 神の宮
     酒は飲んでも飲まれるな
     天地の恵み頂けよ
     御神酒(おみき)頂かぬ神は無い
     赤提灯(あかちょうちん)の朗らかさ
     夜通し月見に花咲かせ
     歌い語れば取り越しの
     苦労も要らぬ過ぎ越の
     苦労も何処かへ飛んで行く
     裸で生まれて無一物
     なりて往くのが人の道
     この世で少々膨れても
     その財産がいつの日か
     重荷になりて自由なる
     身魂もついにとらわれて
     奴隷を使う奴隷へと
     なりていつしか暴君の
     悲境に落ち込み自暴自棄
     気ままな者等をほふらんと
     いう鬼心湧き出でて
     油の王(きみ)の悪戯に
     泣かされ嬲(なぶ)られ魂(たま)抜かれ
     益々(ますます)奴隷に成り下がる
     哀れな民のその中に
     言霊強き逞(たくま)しき
     のんべえモールののんべえが
     月を拝して日の出島
     その将来を浦島の
     港街から祝福し
     唄い語るも勇ましき
     金の恵みで膨れたる
     善悪知る木の果物も
     遂に熟して地に落ちる
     むしって取るな霊主体従(ひのもと)の
     民(たみ)は生命(いのち)の木の実から
     無限絶対無始無終
     永久(とこしえ)続く神の道
     頂き進むが惟神(かむながら)
     うれしうれしの天職ぞ
     ああかむながらカムナガラ
     御霊幸倍(みたまさちはひ)ましませよ
     神素盞嗚大御神(かむすさのをおほみかみ)
     瑞(みづ)の御霊(みたま)の大御神
     やがて都会の真中(まなか)にも
     枯れ木に花の咲きしごと
     煎り豆に花の咲きしごと
     誠の花ぞ咲ほこる
     ああかむながらカムナガラ
     御霊幸倍(みたまさちはひ)ましませよ
     嗚呼惟神(ああかむながら)カムナガラ
     御霊幸倍(みたまさちはひ)ましませよ

      平成二一年二月一〇日 ~ 一一日 旧一月一六日 ~ 一七日 垣内政治 識
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